ギリシャの首都アテネから車で北東に車で5時間走ればヴォロスという港町に着きます。そこは有名な観光地ではありませんが、ここから近くの島へフェリーが出ているのでガイドブックにも載っています。
ずっと昔からこの辺りには人が住んでいたようで、町を歩いていると昔の遺跡を目にしました。確か宮殿跡と看板に書かれていた記憶がありますが、海に近い場所だったので海が荒れたら家に被害が出そうな場所に権力者の屋敷があったとするのは疑問でした。
この町は今も昔も港町だったようです。紀元前13世紀の昔にこの町から英雄たちが大冒険に出かけた伝説が残っています。ヴォロスの町の東に見えるペリオン山から木を切り出して船を造ったそうで、ヘラクレスなど名の知れた男たちがアルゴ船という1隻の船に乗り込んでこの町を出発しました。
船といっても当時の技術は未熟だったはずですから、フェリーではなく屋根つきのボートを想像するのがいいかもしれません。そんな船でいったいどこへ冒険に行ったと思いますか?
叙事詩にはこの冒険の様子が歌われています。彼らは今のグルジアという国を目指しました。ヴォロスを出発してトルコのイスタンブールへ行き、アジアとヨーロッパの間に広がるマルマラ海を抜けて黒海に到着し、黒海の東の国へと航海を続けました。ここにあった黄金の羊の毛皮を持ち帰ることが彼らの旅の目的でした。
ヴォロスの海岸に立った私はアルゴ船が出て行った海を見つめました。アルゴ船は当時としては前代未聞の大きくて立派な船だったはずです。造船に関わったヴォロスの人々は船の堂々とした姿に感動したはずです。船大工など出来上がった姿に感無量だったことでしょう。
私が海を見ると離れたところに小さくなった船がありました。どこかへ向けて港を出発したのでしょう。はるか昔にアルゴ船もこのようにして出ていったのかと思うと、名残惜しくて私は遠ざかる船から目を離せませんでした。船を見送る人々も私のようにずっとアルゴ船を見続けていたのでしょうね。
ヴォロスは大冒険発祥の地のわりには知名度は高くありません。港の東のほうにアルゴ船の小さな銅像が立てられているだけでした。
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